2025/03/05その他

情熱的なプロンプトの書き方

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情熱的なプロンプトの書き方

執筆:CISO事業部 上間 雅之
監修:CISO事業部 吉田 卓史

本記事は提案活動でのLLMを利用する際におけるプロンプトの書き方を紹介いたします。

  • LLMを使った効率化だけを考えるのではなく、提案が受け入れられるためには、人間の情熱やバイアスを適切に加えることが重要
  • LLMの提案と提案者のコミュニケーション能力が融合することで、より効果的な提案が実現

LLMを利用した提案活動についての市場の動向


AI技術の進化にともない、提案活動の効率化が大きく進展しています。その中でも、特に大規模言語モデル(以下:LLM)は、提案書作成やコミュニケーションにおいても、従来の手法を大きく変革させていきます。LLMの導入は、単なる作業効率の向上にとどまらず、人間の思考やバイアスの扱い方にも影響を与えるため、非常に考え深いテーマとなってきます。

提案活動におけるLLMを利用した際の付加価値


まず、LLMを活用することで、提案書や報告書などの文書作成は格段に迅速化します。これまで、担当者がひとつひとつ手作業で行っていた構成や文言の調整は、LLMによって自動生成され、短時間での出力が可能となりました。例えば、膨大なデータや情報を短時間で整理・分析し、その結果を基にした提案文を自動で生成することができるため、通常数日かかる業務を数時間で完了させることも可能となっています。

しかし、提案活動における効率化は単に文章の生成に留まりません。LLMは、過去の提案書やプロジェクトの成功事例を基に最適な内容を生成することで、提案の質を高める手助けもします。さらに、LLMが提供する幅広い知見を活用することで、提案内容に新たな視点や創造的な要素を加えることが可能となります。

つまり、LLMが膨大なナレッジを学習し、その知識を基に顧客に対して一歩先を行く提案を行うことが実現できることになります。

提案活動でLLMを利用する場合の考慮する点と実例


一方で、提案活動において最も重要なのは、提案が「受け入れられるかどうか」という点になります。提案を受け入れるのは、最終的には人間であり、LLMが生成した提案をそのまま使用するだけでは、顧客のニーズに十分に応えられない可能性がでてきます。なぜなら、提案はロジカルシンキングと情熱の両翼で成り立っており、ただロジカルだけの正しい提案ではなく、受け手が共感できる「情熱」も必要となります。

ここで重要となるのが、バイアスになります。バイアスとは、提案者や顧客の思考の癖や偏りを指し、一見すると排除すべきものと考えられがちです。しかし、適切に管理されたバイアスは、人間の情熱を伝える手段となります。

つまり、LLMが生成したロジカルな提案に対して、提案者自身の想いを込めたバイアスを付加することで、顧客にとって「共感できる」提案が完成することになります。

また、コミュニケーションも欠かせません。提案書の作成自体が「8割のコミュニケーションと2割のスキル」(*1)で成り立っているように、相手に理解され、受け入れられることが最も重要となります。LLMは優れた文書生成ツールになりますが、提案者が直接顧客と対話し、提案の意図や背景を説明することで、提案に説得力が増すようになります。

以下はゼロトラスト施策の場合を提案するための簡単な参考例となります。
顧客が経営層と密着のある情報システム部様の場合は「人、モノ、カネ、時間」で大枠(キーワード)のバイアスをプロンプトでかけます。
それによって経営層にも理解していただくような提案をすることを心がけるようにします。

下記はピラミッドストラクチャー(ロジックツリー)をLLMで出力した内容となります。

図1.ゼロトラスト提案
情シス様向けのロジックツリー

顧客がエンジニアの場合は「ネットワークセキュリティ、サーバセキュリティ、エンドポイントセキュリティ、認証とアクセス管理」で大枠(キーワード)のバイアスをプロンプトでかけます。
技術よりにバイアスをかけ漏れダブりを防ぎ、構築などを具体的にイメージさせることができます。

下記はピラミッドストラクチャー(ロジックツリー)をLLMで出力した内容となります。

図2.ゼロトラスト提案
エンジニア向けのロジックツリー


上記例のように顧客によってバイアスのかけ方が重要となります。
なお、顧客の情報を外部で提供されているLLMのサービスに出力させる場合は、機密情報や個人情報や著作権などへの配慮とAI特有のハルシネーションについても注意が必要となります。

最後に

提案活動の効率化において、LLMは非常に有用なツールとなります。しかし、LLMの活用がすべての課題を解決するわけではなく、提案者のバイアスやコミュニケーション能力が重要な役割を果たします。LLMは人間の思考をロジカルに補完するものであり、その結果出力される提案に対して、提案者の情熱や想いを反映させることが、最も効果的な提案を実現する鍵となります。LLMを活用することで、提案の効率化と質の向上を両立させ、人間の持つ「バイアス=情熱」を最大限に活かした提案活動が今後ますます求められるでしょう。

【プロフィール】

上間 雅之(うえま まさゆき)
2023年にアイディルートコンサルティング株式会社(IDR)に中途入社。
セキュリティエンジニアとして、製造業様向けのセキュリティソリューションの提案、設計構築、運用など様々な案件に携わる。

監修:吉田 卓史(よしだ たくし)

20年間にわたり、一貫してサイバーセキュリティーに携わる。ガバナンス構築支援からセキュリティ監査、ソリューション導入等、上流から下流まで幅広い経験を有する。また、複数の企業において、セキュリティのコンサルティングチーム立ち上げを0から担い、数億円の売上規模にまで成長させる。IDRにおいても、セキュリティコンサルティングチームの立ち上げを担い、急速なチーム組成、案件受注拡大を行っている。

【参考文献】

*1:ダイバーシティ&インクルージョン│インサイト|DX戦略・セキュリティコンサルのアイディルートコンサルティング株式会社

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